ちっちっちっちっちっちっちっちっちっちっ。
正確な等間隔で刻まれる音が心地よい。
シゴトの報告書や経費申請は、午前中までに全て済ませた。
龍馬伝の直前に鉄腕だっしxのエンドロールを観ながらギリギリ
で終わらせる、毎週のウチには、ある意味奇跡。
冬のニイガt特有の鉛色な空のせいもあって11月末。
にしては、暗くなってきた部屋で先週読んだ本や雑誌の片付けをする。
それが済んだら読書。
読書といっても、堅苦しい本ではなく。
マムガ。
昨夜、会社帰りに寄った、近くのレンタル屋さんで借りてきた。
「宇宙兄弟」。
タイトル名で「おっ?」と思っただけで全巻借りたけど、結構面白い。
この兄貴の気持ちは結構ワカル。
マムガを読みながら、ふと気付く。
ちっちっちっちっちっちっちっちっちっちっ。
正確な等間隔で刻まれる音が心地よい。

9月に取った夏休みで、実家に帰った際にオヤジから貰った時計の音。
どうやら片付けの時に、なにかの弾みで触れたらしい。
わずかに残ってた、ネジが再び作動した模様。
ささやかだけど、意外に力強い音に触発されて、ウチの中に僅かに
残っていた記憶が蘇る。
小2だか小3だかの時に時計が欲しくて、引出しを開けて見つけた、
この時計に触ってジジィに強かにぶん殴られた。
ああ、そうだったな。
懐中時計をひっくり返す。
「功績章表彰記念 日本国有鉄道総裁」の刻印と共にジジィの名が
入ってる。
軍隊帰りの祖父が、敗戦後オヤジを含め4人の子供を抱え勤めあてた、
記念に貰った時計らしい。
それをウチは、帰省の折に、祖父の形見分けとしてもらってた。
形見分けの品。
ジジィの形見なんて、ウチの分があるとは正直思っていなかった。
なにせウチん家は、借地借家。元公務員にして、年金生活30年だか
40年だかのジジィ。
異常な元気さで、国鉄退職後も働いてたけども、お金持ってるとは
思えなかったなあ。
120坪な借地の土地を、ジジィ趣味で盆栽が所狭しと並んでたとしても。
ウチは別に盆栽なんて欲しいとも思わなかった。
見栄っ張りで、外面が良く、身内に厳しい、ジジィからの形見は、幼少の
砌にもらったゲンコツの思い出で形見は十分だよと思っていた。
にも関わらず、形見分け。イトコにも何かしら配られたらしい。
そんなウチを知ってか、時計という形見を貰っておいてナンだけど。
時計の音というのは、好きではない。
ウチのような怠惰なヤツには、時計の音は迫られてる気がする。
「もうスグ『8時だョ』終わるよ?終わったら、スグ寝ないと?」
「ほれほれ、もう時間がないで?」
特に、就寝時の
「あとン時間ン分しか寝れないよ?」
的な感じ。
昔の家の居間から聞える時計の音が嫌で「耳を澄ませば」ならぬ、
耳を済ませても音が聞えないのを腕時計を買う基準にしてた。
だから実家から戻って来たときも、ソイツは放っておいた。
しかし形見分けに懐中時計を貰って、いまは思う。
ちっちっちっちっちっちっちっちっちっちっ。
他に欲しがってた親族もいたと聞くのに。
あんなに形見分けに関心がないようにしてたというのに。
あんなに強烈な思い出を呼び覚ますモノを選りすぐって、一個選ぶとは。
宇宙兄弟をめくる手を止め耳を澄ますと、懐中時計の音が聞える。
不思議なものだ。
マムガを読んでるからか、今はソレが心地よく聞える。
シゴトが済んでラガーを呑みながらの、開放感から思ってる事もあろう。
オヤジ。
あの光景をどっかで観てたんか?。。。。
ウチへの形見分けとして選んでくれたのならベストチョイス。
そう思えた日曜の午後。
サザエさん、を観つつ。
サザエ
「カレーが良い?カツヲをたっての願いということで~」
カツヲ
「カレーでイイけど、不評でも僕のせいにしないでよね~」
宇宙兄弟の主人公ムッタではなく、幼き日のウチはカツヲだったなあ。
懐中時計を時々見ながら呑むラガーはいつもよりも、ちょっとだけ
ほろ苦い味がする。