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FF11±ゼロ。

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昭和の日。

カウンターではなく、ビーサンを脱いで座敷に上がる。
黒板にチョークで書いてある、おすすめメニューから今日は
単品の「鰯の丸干し焼き」を注文し、ご飯と味噌汁を付けて
定食扱いにしてもらう。

近所の定食屋で土曜の朝に、結構な頻度で目撃される某の
ありふれた光景。

注文をオバチャンに通したところで、カウンター席のオヂサンが
席を立ち入り口近くの清算口で代金を払ってる。
レジ脇の棚に置かれた、オヂサンがさっきまで読んでた新聞。

距離にして6歩。
ソッコー素足のまま床に下りて、つま先立ちで新聞を奪取する。
席に戻ると、レジ前のオバチャンが苦笑いしてるのが見えた。
ウチも口の端をちょっとゆがめて、パンパンと足の埃を払う。

新聞はいつも一面から、しかも最下段から見るほうだ。
朝日なら天声人語。
読売なら編集手記。
日経なら春秋。
本職の記者様が書く分量としては少ない文字数だと思うけど。
日々の事件や政治、経済といった出来事から時候まで、
幅広い見識と卓絶した筆致で書かれている数百字のコラム。

しかも各新聞それぞれに個性の違いが滲み出てて面白い、
朝刊の「顔」。

だから、いつも一番初めに目を通す。
お。
『祝日法の改正で来年から4月29日は「昭和の日」に変わる。』
ほう、知らなかった。。。
お盆に載せられて出てきた定食を前にして、もう一度同じ記事を
読み直しながら、一匹目の鰯の丸干しを頭から口にほうばる。

『広告コピー「トリスを飲んでハワイへ行こう」は』知らないけど。
『若い人たちの間で海外旅行が身近な日常の一部になった』のは、
もはや否定できない事象かもしれない。

『昔の夢が生活になり、昔の生活が夢になった。いくらか不思議な
気持ちがしないでもない』
海外といえば、北海道と沖縄しか行ったことがないウチは
細かい骨とワタが昔は嫌いだった鰯の二匹も、もしゃもしゃ食べる。
ンマイ。

昭和は遠くなりにけり。
団塊ジュニアの昭和生まれとして、そんな陳腐なセリフを言う程、
「昭和」という元号は遠いモノではないけれど。
たった十年の間にも味覚は変わる。鰯はアタマから食べるのが
一番美味い。

いくらか不思議な気持ちを抱えながら、鰯のほろ苦い味覚が
消えないうちに、ウチは七味を振りかけてたゴハンをほうばった。
大型連休が始まった。



補足:読売新聞 4月29日付・編集手帳から記事抜粋

寿屋、いまのサントリーがハワイ旅行の懸賞を募集したのは
1961年(昭和36年)のことである。
広告コピー「トリスを飲んでハワイへ行こう」は宣伝部にいた
作家山口瞳さんの作と伝えられる◆

1等の賞品は8日間で五つの島を巡る旅であったが、
海外渡航はまだ自由化されていない。当選者にはとりあえず、
約40万円分の「ハワイ旅行積立預金証書」が贈られている◆

3年後に渡航が自由化された。
「時代を映したキャッチフレーズ事典」(電通)によれば、
当選した64人のうち実際にハワイへ旅立ったのは4人のみ、
残る人々は現金で受け取るほうを選んだという◆

戦後の復興に向けて高度成長のエンジンが全開しつつあった
とはいえ、誰もが衣食住の「生活」を調えるのに追われ、
海外旅行の「夢」までは手も気も金も回りかねたらしい◆

若い人たちの間で海外旅行が身近な日常の一部になったかと
思えば、昭和30年代の暮らしぶりを懐かしむ映画や催しが
人気を集めている。
昔の夢が生活になり、昔の生活が夢になった。
いくらか不思議な気持ちがしないでもない◆

大型連休が始まった。
祝日法の改正で来年から4月29日は「昭和の日」に変わる。
テレビのニュースが空港から伝えるおなじみの出発風景を
眺めながら、“トリス世代”の胸をかすめる感慨もひとしおだろう。
(2006年4月29日1時50分 読売新聞)
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by zerohour_co | 2006-04-29 11:23 | 浮き世のコト
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