力を溜めに溜めた、その拳がキュンキュンキュンキュン!と
甲高い音を立ててエモノに叩き込まれる。
そこから真の勝負が始まる。
三連休の初日に、年末から残してた大掃除の続きをしながら
ヴァナ・ディールにログインした。
古新聞を湿らせて歯をガチガチさせて外側の窓を拭いてると
ガラス越しにモニターにお声が掛かってるのが見えた。
ソッコーお誘いに飛びつく。コレすなわち現実逃避。
モ侍赤白黒と【忍者】のウチ。
目に痛いほどの照り返す白砂が眩しいバルクルム砂丘を
縦断して海辺の洞窟に足を踏み入れた。
【グスタフの洞門】。
その繁殖力にモノ言わせ今や量産型と陰口叩かれる種族
【ヒューム】の山師グスタフがミスリル鉱脈を探し求めて
生涯を掛けて掘り進めた夢の跡。
彼の叶わなかった、この夢の跡で通称トンボとゴブリンを
主食と見定め戦闘を始める冒険者御一行様。
空蝉枚数かぞえ唄に不安が残るウチは【連携】の参加は
丁重にお断りをして盾役に専念する事にした。
盾役は敵の攻撃を集中して受けるのが、その役目。
その要諦は、敵の攻撃対象になってる状態、つまりタゲ
(ターゲット)を自身に固定させておけるかで価値が決まる。
逆に言うと、連携に参加もしない自分にタゲ固定もできない
盾役なんぞには存在価値がないのである。
そんなヤツは大飯食らいの役立たずなのである。
とんだ食わせ者なのである。ボンクラ野郎なのである。
ボンカレ●の紛い物ポンカレーの如くパチモンなのである。
お節も良いけどカレーもね!なのである。
お節とカレーはさておき、自分の存在価値を証明するためにも
侍様が釣ってくる敵に対して【挑発】一閃。
黄色と赤のエフェクトが敵に向かって弾ける。
敵の攻撃で消えてゆく分身の枚数を数えながら【空蝉の術】の
壱と弐を駆使して分身を張替える。
「避ける盾」と異名を取る忍者にとって、ノーダメージで戦闘を
終えたり後衛様から「暇ヒマー」と言われるのが不可視の勲章。
それを目指しながら、侍様とモ様が繰り出す【連携】の時を待つ。
合図と共に侍様が振り下ろす日本刀、力を溜めに溜めたモ様が
敵の背後に回ることで大ダメージのボーナスが与えられる
「不意打ち」という動作をした後、その拳が独特の台詞と同時に
キュンキュンと甲高い音を立ててエモノに叩き込まれる。
【連携】成立。
大ダメージを受け、その傷を与えた冒険者を叩き潰そうと振返る敵。
ここからが盾役の真の勝負。
笑いとタゲは死んでも取る!
モ様に怒りの矛先を向けた敵のタゲを奪還すべく刃を立てるウチ。
【挑発】、攻撃力が上がる「バーサク」という能力を発動した上での
必殺技、遁術と呼ばれてる忍者特有の攻撃魔法。
思いつく限りの技と英知を集結し、再び振り向かせようと試みる。
。。。何をしたって、もう振り返らず。
トンボやゴブリンの心をがっつりワシ掴みにして片時も放さない
次世代のスーパーアイドル!モンク様(首長王国ランク1)、
ここに降臨。
後で束ねた黒髪を振り乱し、その痩身にタゲを固定させたまま、
一心不乱に殴り続け、ほぼ全ての戦闘が終了。
完敗。
モ様いつも戦闘終盤は瀕死状態、回復に大忙しの後衛様。
逆に生命力満ち溢れるタゲの取れない某忍者。
無傷を示す生命力のゲージが、不名誉の象徴の様に見えた。
笑えない現実と敗北感に打ちひしがれるウチとは無関係に、
どしどしと積み上がる経験値。
【忍者】39>>41。
大飯食らいの役立たずが確定した七日正月。
うーん、またヤッチャッタ。
とある【ヒューム】の山師と同じく夢破れて夢の跡を後にした。
ハイパーインフレ真っ只中のヴァナ経済の波に飲み込まれ
破産した身では遁術の弐系が買えない現状もあって、
最後に爽快感にやや欠けながらも忍者篇、一旦終了。
かの
ペット持ち職種制覇独り企画会議から4ヶ月強。
長かったよ、おっかさん。遂に駄戦士時代再び到来。